水無し川 -Mizu-Nashi gawa-
あの街に流れていた、清流があった

貴方はまるで、川の様な女性で

聡明と耽美を兼ねあわせ
せせらぎのように優しく流れる感情を持っている女性だった

きらめく水面のような眩しい光を放ち
世の男性が目を細める程の輝きと魅力を重ね持つ

そんな女性だった

幾重にも重なり合う長い黒髪を靡かせ
明日を振り返らず、ただ前を向き生きていく姿

そんな貴方の姿に、少年のように心を躍らせ、目を輝かせていた
あなたはまるで、川の様な女性だった


いづれ起きる雨に、
あらぶる姿へと変わる、貴方の変貌に
嵐に怯える少年だった私は
今思えば、少年故の未熟さが、貴方という名の洪水に為す術を持ち得なかったのかもしれない


貴方はまるで、川の様な女性で

強情と荒唐を兼ねあわせ
雪崩のように激しく流れる感情を持っている女性だった

土砂を含んだ澱んだ雄々しさをむき出しにし
全ての人々を巻き込むほどの恐ろしさと力を重ね持つ

そんな女性だった

激しく折り重なる黒髪を靡かせ
通り過ぎる明日を見向きもせず、意の赴くままに突き進む姿

そんな貴方の姿に、少年のように心が怯え、目をつぶっていた
あなたはまるで、川の様な女性だった


貴方はまるで、川の様な女性で
聡明と耽美を兼ねあわせ
激情と温厚を互いに繰り返す
そんな女性だった

今は貴方の姿を見る事もなく
街には水の引いた貴方の存在した痕だけが残っていた

川面なき水無し川

貴方にはもう会えない。

あれは夜に流れた幻の川

98.8.31 in da house


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