拝啓 -Haikei-
前略
貴方と共に異国の地を旅してから、
何枚のカレンダーをめくったのでしょうか。
10月に入り、半袖も辛く上着を羽織った時に
貴方も元気に過ごしているかと気になり、
こうして筆を取った次第です。
あの頃の私は、
貴方に「愛している」という勇気もなく、
貴方は「私はすぐに男に飽きるから」という、
強がりばかり言っていたような気がします。
互いに触れ合う事もせず、
それでも互いを気にしていて、
二人は愛し合っていたような気もするのですが、
それは気の精であるような気もします。
今となっては、
あの時の気持ちが本物であったかどうかを確かめる術も無く、
思い出というには、あまりにも行動しなかった自分が
それを思い出と語れない状況へと追いやっています。
あれから数ヶ月後とに私は貴方に出会う機会があったのですが、
私は何食わぬ顔で貴方と話し、
貴方も何もないような顔で私と話し、
何も無かったのだから当然の事なのですが、
私は全てのチャンスを見過ごして、
気が付けば秋となっています。
貴方がこの手紙を見ることはないでしょう。
私も貴方に「愛している」と伝えることもおそらくないでしょう。
それでも私は寒くなると、
貴方を「愛している」事に気が付くのかもしれません。
忘れない為にしたためたこの手紙、
これで貴方を「思い出」にしようとしているのでしょうか、私は
追伸
今でも貴方は、
私ではない男に「私はすぎに男に飽きるから」と言っているのでしょうか?
願わくばあれは私を無碍にするための言い訳であり、
今は幸せであるということ、ただただ願うばかりです。
98.10.13 in da house