Magic meets magic


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東急東横店で働いていた若いマジシャンの案内で、私は再びその店に向かう事になる。
マジックショップ「ウイザードイン」そこは依然と何ら変わらない趣きで、ただ違うのは、一緒に行く人が、その店に馴染みの人かどうかということぐらいだろう。少なくとも入った時の従業員や、店の客の反応は前回とは違うものを感じた。

「ウイザードイン」では、マジックグッズの販売の他にもいくつかの業務をこなしているようだった、商品棚の前にはテーブルが置かれ、常連と思しき人たちが飲食をしていた。どうやら軽喫茶的な事もしているのだろう。
そこには女性の店員が一名と恰幅のいい年配の男性が一人いた。あとは・・・数名の常連さんがいたような気がする。どうもそのへんの記憶は曖昧になってしまっている。ただ、これは時間の経過によって記憶が薄くなっているわけではない。

もっと強烈な記憶が鮮やかに残っているから

女性店員が若いマジシャンと会話しているなかで、一人のマジシャンの名前がでてきた。当然、マジシャンの名前など知らぬ私は、半ば興味本意でそのマジシャンについて尋ねた。そのマジシャンの名前はデビット・カッパーフィールド、アメリカでもトップマジシャンであり、非常にすばらしいマジックショーをするということだった。アメリカのCBSで年に一回マジックショーの番組を手掛けていると言う事だった。

タイミングこそが人の岐路を左右すると感じる

丁度、彼・・・デビットのCBSで行った最新の番組が入荷したてということで、若いマジシャンが見ようか、と誘ってくれた。偶然にも他にも見た事の無い人が居たので、その即席の上映会は行われる事になったのである。私たちはテレビの前に座る。題目は「オリエントエクスプレスの消失」というものだった。ビデオデッキにテープを入れる、見た事もない英語のCMが数分続いた後、その番組は静かに始まった。
私は二時間弱のあいだ、ブラウン管に釘付けになった。今までに見てきたマジシャン、身近や日本のテレビ番組の中の誰にも、デビットのような輝きを持つマジシャンはいなかった。鮮やかな現象、緻密に計算された演出、高いエンターテイメント性、優れたカメラワーク。それはテレビ番組としても、マジックショーとしても、経験も知識もない一人の青年を圧倒するには十二分であった。

音がする

私は番組を見終わった後、しばしのあいだ放心していた。今までボヤケてしか見えていなかった自分のしたいこと、「すべてが出来るから選んだ」マジックの、本当に自分が目指している理想形に限りなく近いもの、それが自分の目の前に唐突に現れたのである。これが、僕のやりたいマジックなのかもしれない。
その時の私が、ここまで考えていたかどうかは分からない。当初は単なる凄いマジシャンへの憧れだったのかもしれない。事実、私はこの後、東急東横店からウイザードインへ行き、デビットの過去の作品を全て見るという活動を繰り返すことになる。
無論、東横店によるのは一人で行くという度胸がなかったからだが。しかし、当然のことなのだが、東横店の彼がいない場合もあるわけである。
私はある日、一人で行くことを決意するのだが、なかなかビデオを見せて欲しいと、商品も買わずに言うのは気が引けた。しかし、見たいものは見たい、その欲求には適わないのである。

全ての始まりを告げる音がする

私は恐る恐る、この店の主と思われる恰幅の良い男性に訪ねた。もう何度か訪れている、多少の無理は聞くだろう、そう思いながら。
「すいません、デビットのビデオ見せてもらいたいんですけど」
「ん?ああ、構わないよ。好きなだけ見なさい」
その男性は微笑ながら私にそう言ってくれた。
ウイザードインの店長である彼の名前は柳田昌宏、

全てはここから始まったのである。



出会いは・・・・・この頃なのである。

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