Magic meets magic


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第二章
転というには・・・サイコロが僕の運命

高校三年生になってから、私は放送部を引退し、顔を出さない日々が続いていた。

今までの放送というか音楽やラジオドラマへと傾いていた情熱は静かに薄れはじめて、それに台頭してきたのがマジックだった。とはいえ、明確にプロマジシャンになりたいという訳でもなく、かといってアマチュアとして趣味にしようという気持ちもなかった。流される日常の中で「まずはマジックを楽しみましょう」という気持ちの方が大きかったような気がする。

つまり、熱心でもなく、かといって柳田氏に傾倒しているわけでもない。何気ない日常の中に「放送部」というキーワードが「マジック」に変わっただけであって、その日常は大きく変化した訳でもない。
高校2年生の終わりまで、放送部というのは僕の日常だった。部活の活動日は月曜日から土曜日までの毎日、夏休みも毎日活動していた。たぶん、学校で授業を受けない日があっても、部活を休んだ日はなかったような気がする。もともと一回ハマルと、そのまま底まで行く性格は、この頃に身についた所作だと思われる。

結果として、この毎日行くというある種の苦痛が存在しない私は、高校三年生の秋・・・だったような気がするが、ウイザードインにおいて、とてつもない記録を打ち立てる事になる。それは、連続来店記録である。
当時、会社員のI氏が一ヶ月連続来店という記録があり、私もかなり毎日遊びに行っていた時に、店員の誰かから「このままだと、斎木くんが記録を塗り変えるんじゃないの?」と冗談の様に言っていたのだが・・・この話は現実になる。
月曜日が定休日のウイザードインに三ヶ月連続来店。約90日・・・実質78日くらいだったろうか、記憶が定かではないが店が休みの時以外は全て遊びに行った。今考えると馬鹿げた話である。
たかが趣味のマジックに、そこまで不明な情熱をかける事が出来るのだろうか?多くの人はそう思うに違いない、かくいう本人も、人の話で聞けば、我が耳を疑う”不明な情熱”である。

これには、まったく異質なファクターが2つ存在している。

一つはコンピューターだった。
当時ウイザードインにはPC-9801RX2という機種があり、多くのパソコン用ゲームがあった。柳田氏は98で光栄が作った「三国志U」を好んでゲームしていたのである。私は小学生の頃に購入したパソピアIQ(東芝製のMSX)を皮切りに、数台のパソコンを買い変え続ける、パソコンユーザーであった。幸運にも?当時の私の家には98が無く、何かのきっかけで「三国志U」をプレイするチャンスがあった。確か、私がパソコンが空いている時に頼んだのだ「柳田さん、三国志やりたいんですけど、いいですか?」
よくよく考えると変な客である。いや、店そのものが不思議な空間なのである。フレンドリーな雰囲気でショップというイメージは薄い。煩雑に積み重ねられたマジックグッズと、奇麗に陳列されているショーケース、ゲームが山積みになっているパソコン周りと、飲食が楽しめるテーブルが二個、椅子は8つなのに、時には十数人の人間がパーティを楽しむ。こんなモノが僅かな空間に密閉されている。ある種の隠れ家的雰囲気が満載な場所だった。こうしていくつかを取りあげて書き連ねても、まったくイメージの伝達が難しい。

この「三国志U」が私の来店意欲を増加させた。実際の話、記憶に残っている限りでは、私は来店してマジックに関係した行動よりも、三国志をしていた時間の方が長いかもしれない・・・いや、間違いなく長い。店に入るなり、柳田氏がパソコンの前にいないのを確認すると、即座にその前に座って電源を入れる。そんな記憶が明確に残っている。「柳田がいなければ、斎木はそこが定席」そんな感覚だったような気がする。実際の話、私の店の記憶は、その角席に座っている記憶しかない。

もう一つは、テーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG)というものだった。
今の人達は知らない方が多いのだろう、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」、通称D&Dというゲームがある。これは今一般に言われるコンピュターのRPGとはまったく違う、すべては人の会話で行われる。
シナリオを展開させるのも人ならば、実際にプレイするのも人。つまりコンピューターで言うところのシナリオを展開させ、モンスターを出現させ、村人の会話をする、それらをマスターと言われる人が一元管理する。プレイヤーはキャラクターを作成し、マスターのシナリオに沿って、自らの行動を決定し、モンスターを退治し、シナリオをクリアしていく。
なんといっても、このゲームの面白さは自由度である。普通のゲームならば、ドラゴンの洞窟に入って退治するとしたら「戦う」しか方法が無いだろう。ひたすた斬ったり、魔法をかけたり・・・TRPGはその制限が基本的にない。プレイヤーの権限が大きい。例えば、崖の上からオイルをドラゴンに投げつけて、そこに火の付いた弓矢を撃って火だるまにしようというアイデアをプレイヤーが思い付いたとする。そんなアイデアが実際に行えるのである。例えば落とし穴が掘りたいといえば、掘れてしまうのである。なんせ、そういったアイデアを処理するのがコンピューターではなく人間だからこそ、そういう応用に対する処理はずば抜けている。
元々ゲーム好きである私は、以前からこのTRPGを好んで行っていたのだが。よもやウイザードイン、つまりマジックショップで再会出来るとは思っていなかった。柳田氏はTRPG、特にD&Dを趣味としており、ウイザードインでは定例でそのゲームを楽しむメンバーが集まってプレイしていたの。
私は、このゲームの集まりに、何がきっかけかは覚えていないが参加し始める。これもウイザードインへと足を向ける原動力になったのである。

後に連続来店記録を樹立する私の、真の原動力は実はマジックとは関係しない、これらのファクターがある。

後にこのうちのテーブルトークRPGは、私の人生に大きく関係してくる。まさにマジシャンへの道を進みはじめる大きなきっかけとなるのだが・・・

この時機、つまり高校三年生が私にとっての「転」になる・・・

続く・・・


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