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Magic meets magic
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その頃のウイザードインに来店する客は三種類のタイプがいた。最初にマジック、当然である。この客が来ないのならマジックショップとして成立するわけがない。次にテーブルトークRPGをする為に来店する人、この人達も結構多かった。たしか一ヶ月に一回か二回くらいのペースで集まってプレイしたいた筈である。ウイザードインにある二つの円卓うち、片方はゲームのときに完全に潰れてしまう。
当時、ウイザードインでは現在のPARCOで行われている毎日カルチャースクールのマジック講座の前身というか源流となるレクチャーが行われていた。一クラス三名〜六名という小人数で、一年から二年程度のカリキュラムでレクチャーを受けていた。
このレクチャーとゲームが重なった日、もちろん調整をしているので幾度もあったわけではないのだが、そんな日は大変な騒ぎである。「しっちゃかめっちゃか」を絵に書けといわれたら、迷わずあの時のウイザードインを写真に撮り、模写することを薦めるだろう。
話が逸れてしまったが、来店する三種類の客のタイプの最後は、コンピューターの客である。当時、事務所に来てパソコンの前に座り「三国志」をやって食事をして帰る人は、私だけでなくもう一人いたのである。Mさんという方なのだが、今ふと思い出すと、何故Mさんはウイザードインに来ていたのかを知らないことに気がついた。何せしょっちゅう来ては「三国志」を遊んで帰っていたのである。マジックもテーブルトークRPGも関係ないようだし。というわけで、タイプは三種類いるということでまとめて、この件には追求しないことにしよう、どうも答は出てこないような気がする。
話を戻そう。テーブルトークRPGは今のゲーム機のRPGを想像してもらえばいい。何度も集まってゲームするのは一つのシナリオなのである。だからセーブしては少しずつ進めるという感じに捉えてもらって構わない。
7名くらいで遊んでいたはずだが、その中に私と柳田氏が入っていた。私は最初から遊んでいたわけでなく、途中から参加したのだが、その辺の経緯は良く覚えていない。
余談だが、テーブルトークRPGでは新しいキャラクターが途中から参加する事は比較的容易である。TVゲームでいうところのソフトの部分をマスターと呼ばれる進行役の人間が管理するため、シナリオを展開している最中に容易に今後のシナリオに手直しが加えられるのである。またプレイヤーがどのような行動をしても臨機応変に対応することが出来るのである。
普通のゲームならば洞窟に住み着いている怪物を倒しに行くシナリオがあったら、経験を積み強くなって倒すか、ソフトが元々持っている特殊なシナリオ、例えばおびき寄せて落とし穴に落とすとか、そういう決められたシナリオで倒すことしか出来ない。テーブルトークRPGでは、その行動の全権をプレイヤーが持っているのである。だからどのような倒し方をしても構わないのである、色仕掛けがしたいと思ったらすることが出来るのである、成功するかどうかは別の話だが・・・
私はこのメンバーのシナリオで半年以上遊んでいたのである。このシナリオは当然のように進むことで終了することになる。実際には後ろに次々とシナリオを足して行くことが出来るので終わらないのだが、一段落着くこともよくある。メンバーがこのゲームから抜け出す。つまり参加しないようになるためには、こういう一段落したところで、そのパーティから抜け出すような話をして、別れるのである。
私は非常に有意義な時間を過ごしていたし、辞めたいと言うわけではなかったのだが、まあ長々と続けていても仕方が無いし、そろそろこのゲームの集まりからは抜け出そうかな、と考えた。高校三年生の、春頃の話である。
その頃、私はウイザードインに来る日数が減っていた。とりたててマジックへの情熱が冷めていたわけでもないのだが、只なんとなくである。
ここでゲームのメンバーから抜けることでしばし、間が空くのかな、と思っていたのだが・・・
パーティは大きな冒険を終了し、一休みする為に街に戻ってきた。メンバーのそれぞれは莫大な報酬と、冒険の中で得た宝石や魔法のアイテム、それらが割り振られた。冒険者としては大きな成功であり、一生を暮らすためには充分過ぎるお金を手に入れていた。
一向は宿屋で報酬の分配を終えると、今後について話し合いを始めた。これだけの報酬を得て、まだ冒険者として旅を続けるのか、それとも違う道を歩み始めるのか。
クラム・チャウダーという若い剣士は考えていた。彼がこのパーティに参加したのは世界中にある不思議な食材を知るためであり、同時に報酬を得て将来は自分で料理屋を開くのが夢だった。決して旅を続けて冒険の世界に己を置いておくことでも、剣の腕を磨くためでもない。腰には生きていく為の二本の長剣と、自分の夢を掴む為に必要な包丁が常にあった。自分の夢を叶える為の報酬は充分に受けた。この依頼も一区切りした。ここが自分の夢へのスタートなのでは・・・
彼は他のメンバーとの話合いの中で口を開いた、
「僕は自分の夢を追いかけようと思っているのですが・・・」
パーティの中に老魔術師がいる。名前はダイ・バーノン、頼りになる魔術師であり、誰もが信頼できる魔法のエキスパートである。様々な魔法を自在に操り、戦いや多くの苦難を打ち破る原動力となってきた。
バーノンはクラム・チャウダーの「自分の夢」という言葉に反応し、ちょっとした悪戯を思いついたのである。ここまで共に旅をしてきた。彼の夢も知っているが、その夢の前に、彼の二刀流剣士としての才能を閉じ込めてしまうのは少々勿体無い。彼はまだ若い、もう少し冒険者としての未来が見てみたいと。バーノンはチャームの魔法を唱えた、キーワードは「自分の夢」、それが「冒険者として成長したい」ということであるように・・・
この一節は当時のゲームのシーンである。お気づきかもしれないがクラム・チャウダーとは当時、私がプレイしていた戦士の名前である。そして、ダイ・バーノンを演じていたのが、何を隠そう柳田氏なのである。
柳田氏は私がパーティから離れようとした事にたいして、離れないようにすべくチャームの魔法をかけると宣言したのである。今考えると無茶な話だ、ゲームから抜けたいと私が言っているのに、それは許さないと言っているのである。しかも、それを本人同士が話しているのではなく、ゲームの世界のキャラクター同士で話しているのである。
私はこの魔法次第ではこのゲームから抜けないことになったのである。ゲームの世界のキャラが抜けれないから現実の自分も抜けない。まあ、決まったことは仕方がない。
マスター(ゲームの進行役)は魔法がかかるかどうかの判定方法を決めた。通常、魔法が発動したかどうかはサイコロを用いる。サイコロを振って幾つ以上がでれば成功、とかそういうものである。今回は魔法をかける側もかけられる側も熟練の冒険者であり、簡単には掛からないという設定になった。
結局、二十面体のサイコロを振って「1」が出たら成功ということになった。
二十分の一の確立で私はこのシナリオに残ることが決定した。すなわち引き続きウイザードインに定期的に顔を出すと言う事である。サイコロを振るのはダイ・バーノン、いや、この場合は柳田氏ということになるのか。
今考えると、私がこうしてマジシャンである上でウイザードインにいた時間はとても大切なことである。私のマジック人生は、それなしでは考えられない。だからゲームであろうとしても、ウイザードインに行くことが私にとって大きな成長の糧であることは間違いがない。
回想して改めて感じるのだが、この時に、私は柳田氏にチャームを掛けられてしまったのだろうか、「マジシャンになる」という「夢」を・・・
今から八年前のウイザードイン、
テーブルの上の二十面体サイコロは、確かに「1」を指して止まっていた。
続く・・・
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