Magic meets magic


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 今に始まった事でもなく、私は文章を書くことが趣味のような部分が強かった。中学生の頃から文章を書くことへの欲求は強く、若輩ながらも小説を書いていたのを今でも覚えている。当時の私は好きな作家というのも無く、名前の「あ」行から順番に文庫を片っ端から読破していた。当然の事だがある一人の作家を読みつづける時期が長い。その作家というのは赤川次郎である。

 文章の軽さが当時の私には新鮮だったのだろうか、文章から受けた影響力は今尚残っているような気がするくらい、赤川次郎作品は読み込んだものである。中学生当時、本屋に並んでいた全ての赤川作品は購入して読破している。
 小学生の頃は江戸川乱歩にも感化されており、基本的にミステリが好きなのだろうか巧妙稚拙に関係なく推理トリックというものに特に興味を抱いていた。また伏線を好む傾向にあった。現在の自分のマジシャンとしてのプレゼンテーションにも、その頃受けた影響はかなり垣間見る事ができる。
 中学生の頃、自らの手で書いた小説は10作品程度だろうか、どれも短編でB6版の縦書きノートに鉛筆でびっしりと書いていた。表紙も当時の赤川作品のようなデザインを自分で考えて鉛筆で絵を書いた。完成した作品はクラスメイトが読者になってくれた。

 中学生の終わり頃から高校生にかけては作詞作曲に精を出していた。当時のファイルは今でも家にあるのだが全部で100曲くらい作った覚えがある。当時の私は譜面を書く能力が無かったので、どれも歌詞しか残っていないのだが、それらの大半の歌詞は今でも頭の中に曲が残っている。とはいえ、今なお譜面にする能力は無いので、これらの曲は世に出ることは恐らく無いだろう。

 高校生になると放送部に在籍中、ラジオドラマの脚本を手がけていた。本格的にマジックを始める3年生までの2年間で述べ10作品程度のラジオドラマの脚本を書いているはずだ。現在、手元にはそれらの中の極一部の台本しか残っていない。収録したラジオドラマのテープも手元にはないので、明正高校放送部に収蔵されていないければ、当時の私が書いたシナリオは全て幻の作品という事になるのだろう。

 こんな書き物人生を送ってきた私が、再び書く作業に従事するのはウイザードインでバイトをするようになってからしばらくの事だった。どういう経緯でそこに至ったのかはよく覚えていないが、当時マジシャンとしては何一つ満足に出来ない私が、ウイザードインでバイトをする上で出きることを相談していて偶然みつかったのだろうか、仕事というのはマジックの解説書だった。
 無論、最初から書いたものが解説書として使うという訳ではなかったろうが、柳田氏は私に一冊のマジックのレクチャーノートの解説を書くように指示した。「始めてのマジックの解説書だから上手くはいかないだろうが、まず書いてみなさい」、当時の柳田氏は私にそう言っていた記憶がある。

 当時のウイザードインでマジックの解説を書くという作業は、実際にはかなり高度な技術を要するのである。完成されるまでのプロセスは簡単で、まず考案者が演技を見せる。そして具体的なやり方の説明を書き手に伝える。あとは書き手は聞いた内容を文章化していけばいい。ただ、手順が分からなくなった時に常に近くに考案者がいるわけではないので、手順と現象は全て頭の中に叩き込む必要がある。つまり、自分で出来るようにならなければいけない。おそらく、この手法は他の解説書を書いてる人とは違いがあるかもしれない。ビデオに撮っておいたり、考案者自ら解説を書く場合もあるのだろう。少なくとも当時はその手法を用いていたというだけである。
 私にとっては、非常に困難を極める作業となった。その一番の理由は解説を書くことになったレクチャーノート「UNBELIEVABLE」は、当時のウイザードインが出している商品の中でもスキルの高い商品で、技法的には難しいが現象のインパクトが強いというもの。正直な話、まだマジックをはじめて間もない私にとってはなかなか難しい部分も多くあった。正確に言えば出来ないものもあったような気がする。
 素地になる技術が無い中で、私は柳田氏の一挙手一投足を記憶し、なれない手つきで覚えた。出来ないという現実は、読者側の立場にたって、どういう部分が分かりにくいかというのが体験できるという利点へと置き換えるようにした。
 こうして、かなり時間がかかったのだが…たしか2週間くらいかけたような気がする。カードマジックとコインマジック、そしてアイテムの3つがワンセットになっているレクチャーノート、「UNBELIEVABLE」の第3巻は完成し、発売に至ったわけである。

この通称アンビリと呼ばれる作品集を皮切りに、私はウイザードインのアイテム群の解説を書き始めることになったのだが、それは私に思いもよらぬ副産物を与えてくれることになったのである。

続く・・・


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