Magic meets magic


←戻る

第七章
油と水 −交わるはずの無い、交わった人−

 子供の頃に実験をした事がある。 ビーカーか筒状のガラス瓶の中に、水と油を同量いれる。ビンの中で水と油はとても鮮やかな二つの層を作り出す。層と層の間はしばらくは波立っていて激しく混ざっては戻る事を繰り返しているが、暫くすると綺麗な一本の線になり水と油は完全に分かれてしまうのだ。

  水と油はその重さが異なるために、重たい油は下に沈んでしまい二つの液体は綺麗な二層に分かれるという「水と油」のお話だ。まったく反りの合わない人同士の事を「水と油のようだ」と表するが、まさしくその事である。マジシャンにとっては「水と油」といえば古典的で有名なマジック、「オイル&ウォーター 」が上げられるだろうか。
  4枚の赤いカードと4枚の黒いカードを交互に混ぜるものの、一回指を鳴らすと、全てのカードが赤と黒に分離してしまうというものだ。暫くマジシャンをしていれば一度は演じる演目いえるだろう。

  思えば、水と油の関係だと思う。それは仲が悪いとか、性格が合わないという意味ではなく、ある意味、まったく相対する事がありえない環境下の二人だったのである。しいて言えば共通項は同じマジックをするものであり、同時に同じ場所に顔を出しているという事だけだろうか。 とはいえ、方や毎日のように顔を出していたが、もう一方はたまにくる程度だったような気がする。他のメンバーに比べて彼がいた記憶は前半に関しては非常に少ない。大きな大会があったにもかかわらず、忙しいので参加できないという事で、メンバーと大喧嘩になったのを記憶しているくらいだ。当時は大会に来ないなんていうのはナカナカ考えられないくらいの環境だったのだ。強制参加とは言わないものの、皆で一丸となってマジックを盛り上げていこうというのがまだまだ途上の頃だけに、全員の協力体制は今以上だったとも思える。

  彼と私が始めて言葉を交わしたのは、私がまだ学生の頃である。当時は彼もまだ学生だった。私は「高」校生で、彼は「大」学生ではあったが。

  日曜か土曜だったと思う。昼過ぎにオープンしたウイザードインにいつものように顔を出す。当時はまだバイトをしていたか、していたとしてもまだ初めて間もない頃だったと思う。まだまだウイザードインに遊びに来る人たち全員との面識がない頃だ。奥のテーブルに、その男性はいた。ひょろりとした印象が今でも残っている。麻のジャケットにジーパン。季節は初夏の頃だろう、インナーにTシャツ・・・いや白いボタンダウンのシャツだったかもしれない。

  今でもあまり洋服に違いがないか・・・

  私は彼と同じテーブルで別の人と話していた。ちょうど話題はコインマジックの話だったか、ワンコインルーティンの話からジャンボコインを使ったマジックの話題にと移行していた時だ。柳田氏が、話題に入り込む 「彼に聞いてみたら、コインマジック上手いから」 と私達の正面にいた男性を指して言った。

  「へー、そうなんですか。もし良かったらジャンボコイン何か見せてもらえますか?」

  私が興味津々に彼にそういう。 彼はそれに頷くと、鞄の中からジャンボコインを1枚とりだしてテーブルにおいた。 「はい、ジャンボコイン」

  ・・・今、思うと何と人を小バカにした何とも按配の良くない印象だろうか。しかし事実これが彼との今にも続く関係の最初に1ページであることは間違いないのである。 そう、これが秋元正氏とのファーストコンタクトだったのだ。

続く・・・

戻る