第八章
千載一遇 −運命を変えた3万6千円−
誰しも、自分のターニングポイントを持っているものである。
いやそれは、劇的な人生を送っている人にだけ与えられたものでもなければ、TV「ターニングポイント」に出演した高橋ひろき氏だけが持っているものでもない。
例えば、あの日あの時、あの道を左に曲がらずに右に曲がっていたら、もしかしたら今日の自分はないのかもしれないのである。まあ、それを言い始めたらキリがなくなってしまう。
でも、あの時これをこうしていたから今の自分がある、というのは、もしかしたら一つや二つの覚えもあるだろう。簡単なものから言えば、入った大学、会社、結婚相手。それらを選んだのも一つのターニングポイントと言える。
では、選択ではなく物ならどうだろう?
私のマジシャンの人生を語る上でどうしても外せない一つのマジックグッズがある。今日の私のマジシャンとしての実力やキャラクターを構築する上で、ある一つのアイテムが私のマジシャンとしての人生の転機となったのだ。
商品の金額は当時のお金で3万6千円。しかも買っただけでそのまま眠りつづけていたという外れアイテムでもあった。
そのアイテムが再び息吹を返すのは一年以上経ってから、しかも何とも偶然の産物であった。
斎木創、いや、サイカのマジシャン人生に千載一遇のチャンスが訪れたのは ある冬の柳田氏の一言からだった。