当時、私は北千住にある「OZ」という店のレギュラーメンバーとしてマジックを見せていた。小さい店ながらステージもあり、私はクロースアップマジックを中心にサロンマジックを見せていた。
ステージマジック自体はあまりボキャブラリーがなかったので、手元にあるアイテムを上手く使って見せるというのが多かった。緒川集人のようなスライハンドは練習はしていたものの、観客に見せるレベルには達していなかったのが現実だ。
そんな数少ないステージレパートリーに缶コーラの胴体切断が入っていたのだ。
私が好んで行っていたプレゼンテーションはこんな感じだった。
マジックといえば誰しもが最初に想像するのは鳩、ですよね。あとは、アシスタントの女性がこちらからあちらに一瞬に移動したりする瞬間移動、そして・・・そう、箱の中に入った女性が大きな鋸でまっぷたつになる、胴体切断です。(音楽がかかる)
本日は、皆様のために胴体切断をお見せしたいと思います。もちろん胴体切断には素敵なアシスタントが必要です。今夜は皆様のために素敵なアシスタントをご用意しました。
本日のアシスタント、赤い水着を着ております。3サイズ、上から98。98,98。そして今日のマジックのために支払ったギャラは・・・110円です。
こんなトークから始まる演技は、テーブルの上においた缶コーラの胴体切断をなるべく大げさに、まるでイリュージョンを見せるかのようなオーバーアクションで見せていた。結果として、この演技は「OZ」でも好評の演技で、私自身、営業でも多用するルーティンの一つとなった。
ある時は、実際に胴体切断を見せているイリュージョニストの方が「OZ」に来店した際に見せた経験もある。しかもその方はコーラの自動販売機をモチーフにしたボックスを使った胴体切断をしていたのだ。偶然にもパロディのようになったので、かなり受けていたのだろう。後に、その方がプレゼンに私の道具を借りたいと相談に来た事もある。
この時、柳田氏ははじめて私の缶コーラの演技を見た。半年後に大会を控えた夏の事である。柳田氏は大会の一回戦にその演技に改良を加えた演技を見せるようにアドバイスを出した。
大会は正直な話、このアイデアが出るまで絶望的状況であったのだ。
私の第一回戦の相手は、前回大会の優勝者。栃木氏だったである。