今回、このエッセイを始めるにあたって、自分が残しておきたい内容のジャンルを5つくらいに絞ろうと考えた。そのときに、比較的早めに確定していたのが「音楽」というジャンルだった。

マジックと音楽は非常に密接な関係にある。実際に音楽を使うのはステージマジックだけだと考える旧態依然の捉え方はいまだにあるものの、その利用方法はクロースアップマジックまで広がってきている。

このMUSICの章では私の考えている音楽とマジックの関連性に関して取り上げていくことになるのだが、これは浅くもあり、深くもある。今回はその入り口となる。音楽の持つ魔性を取り上げておこうとおもう。これは今後の音楽の話における根本の部分である。

音楽は非常に古くからある自己表現の方法である。絵にせよ、写真にせよ、そしてマジックにせよ、それは演技者もしくは筆者、すなわち表現者の意図を含んでいる。

マジックにおける音楽は、マジックの現象を行う上で助けとなる効果音として捉えるケースが多い。少し前の大学サークルの発表会などを見ると、そのステージでかかっている曲はマジックのイメージよりも、むしろ演技者が好きな曲、乗りやすい曲などが多かっただろう。

しかし、音楽は一つの作品であるという点を忘れてはいけない。その曲には、その曲を作った人の意図が存在しているのである。

マジックを行う際の音楽は、実は諸刃の剣であり、場合によっては自分のマジックに含んだ意図や表現を打ち消してしまうケースを持っている。俗に言う「曲に負ける」というものだ。これはこれまでに見てきた多くのマジックにおいて目の当たりにしてきた。

一方で、マジシャンの意図にジャストフィットした音楽の場合、その効果は尋常ならざるものがある。

私たちは自分のマジックで音楽を流す際に、その音楽の持つ力をあなどってはいけないのである。それを見落とすと、自分のマジックを落としてしまう事にもなるし、どんなに良い現象だったとしても、観客に伝わる力が半減する可能性もあるのだ。

音楽の魔性をいかに使いこなすか。これはこの章における大きなテーマである。今後もこの中で様々な視点から取り上げていきたい。