最後に紹介するのは、MOVEの章である。MOVEとは動作・動きを意味し、今回のNMTの中では技術や演じる時の動作全般に関係してくる。

この章を書くにあたって、最大の問題は技術を論じることがすなわちやり方を明かす事になるのではなかろうか、という以前から頻繁に続く「種明かし」論に繋がるのではないかという懸念だ。

本章でのベースは具体的な技術の解説に至ることはおそらくない。無論、技術名が出てくることはあると思われるが、そのものを詳細に説明するケースはないだろう。そこは私の役割でもないし、誰かが何処かで日常的に行っている修練であると信じたい。

ではここでは何が取り交わされるかというと、その技術の周辺に付随する修飾の技法や、演技をする際にあるべき動きの部分になるかと思われる。具体的なアイデアはすでにいくつかあるので、これらは近々発表されるだろう。より具体的に理解してもらうために、私自身は動画での配信も考えている。

さて

先日、某所にて若手マジシャンと話している時に、「サイカさんはあまり技術的に難しい事をせずに演技をしていますよね」といった事を言われた。

すべてのマジックに対する印象として捉えるべき話とすると、これに対する答えは「NO」となる。私は日々のルーティンや大会で行うルーティンにおいても、自分でもゲンナリするような面倒くさい手順を行っているケースがある。

そこで私は彼に対し、彼も見たことのあるルーティンが実際にどのような手順で行われているかを説明すると、彼は非常に驚いていた。そんな難しい事をしていたんですか、という意味である。

これは私が考えるところの「見せない技術」の一例といえる。本来であればマジシャンの持つ技術はすべてマジック、すなわち魔法の現象を起こすための方法論であり、それは魔法であって技術ではない。そのため、技術は「見えない」ものが前提となる。私のマジックは、特にオリジナルルーティンではそれが顕著になるのだが、この「見えない技術」という点で難儀なものが多い。悪い言い方をすれば愛好家、すなわちマニアを黙らせるための技術と言える。みているマニアは自分の知っている技術で完結するマジックのルーティンだと思っていても、実際に自分がやってみようとするといくつかのポイントで解決できない状況に陥るというものだ。無論、多くのマジシャンは気づかないで通り過ぎてしまうような細かいポイントなので、評価されていないのだが(笑)

一方で見せる技術も存在する。代表的なものはコインロールなどが分かりやすい。これはマジシャンがテクニシャンであるという従前の印象を与えてきた産物である。

私にとっての見せる技術というのは、「マジシャンらしい動き」の開発である。私のマジックは「サイカさんらしい」と言われたり「怪しい」と評されるが、これらの多くは私が拘りを持って行っているいくつかのアクションと、演技をする際のいくつかの守り事によって構成されている。私自身はマジシャンであることを「素人っぽいのにマジックがすごい」と見せるのが好きではない。マジシャンはどこまでいってもマジシャンであり、その雰囲気は保つべきであると考えているからだ。

序段となったが、今後のMOVEの章では、この「PSYKA」を形成するアクションと決め事を一つ一つ書き出していくと共に、そこにある拘りを紹介できれば、と考えている。