後編を書くにあたって、
前もって誤解は解く必要が(あんまりないけど)あるので言っておこう。
わたしは、

手品師を認めていないわけじゃない

ので注意して欲しい。
手品は日本が今までに育んできた、日本におけるマジック文化の一つの形である。
それは、古い言葉で言えば手妻(てづま)と呼ばれているものかもしれない。
英和辞書を見れば、マジックは第2候補で手品と書かれているものである。
わたしが願うのは

マジックを手品と呼ばないで欲しい

という事である。両者はおそらく表裏一体であるが、永遠の距離を感じさせるほどの違いもある。
別に、このマジックを見せるからマジシャンとか、この仕掛けを使うから手品師という訳ではない。
マジックに対する姿勢や、個々に持つスタイル、理論の違いである。
・・・でも、あきらかに違うものなんだ。
マジックと手品は違うものである。正確には、私のマジックを手品って呼ぶなって話なんだけど。

昨日は、マジックにはタネも仕掛けもあると思っている事が、ちょっとした誤解だというところで終わっている。
じゃあ、一体なんなんだ?という話になる。

わたしの見せるマジックは、その大半にタネも仕掛けもない。
具体的な内容は、ここを見ている数少ないマジック関係者のために控えるが、
なにが代わりにあるかというと、

技術

である。
日本人を中心とした、観客が言うところのタネや仕掛けというのは、表面が自動的に溶けて数字が変るトランプとか、火で熱するとハートが一個浮かび上がってきて数字が変るトランプ とか、表から見て裏が分かるカードとか、そういう細工を施された道具の、実際に施された細工の仕組みそのものをさしているような気がする。観客がタネを明かそうとする時に、それらの細工を探すつもりで見ていれば、昨日も言ったが、タネは一生かかっても見つからない。マジシャンが使ったカードを大学の研究所に持ち込んでも発見できない。

なぜなら、そんな仕掛けはない事が殆どだからである。

わたしは、普段はカードを1組しか持ち歩いていない。
もちろん、おもちゃ屋さんで売っているような普通のトランプである。
このなんてことのないトランプに、マジシャンが技術を用いることで、現象を引き起こしているのである。

たねも仕掛けもありません・・・あるのは技術です。

手品師のいう常套句を、あえて言うのなら、こうなるのだろう。
こんな、ダサダサな台詞は絶対言わないけど・・・観客が示すところのタネの解釈が、僕らの用いるテクニックも含めてタネと言うのであるならば、これはタネではないので、言い方を改めるべきかもしれない。

マイメロディを帽子をかぶせたキティちゃんと言う位、恥ずかしいかも・・・

で、ここまで書くと何人かはきっと誤解するだろう。
じゃあ、タネがあるのが手品で、ないのがマジックなの?
と、それも違う。マジシャンでも大掛かりなイリュージョンを含め仕掛けを用いる人は多々いる。
無論、仕掛けの効果を200%発揮させる技術を持ち合わせているのだが・・・

っつーわけで、タネや仕掛けがマジックの絶対でないことはご理解いただけただろうか、
実際に理解してもらう為には、マジシャンの演技を見る以外には手がないかもしれない。

閑話休題、

「タネも仕掛けもありません」と言ってから演技を始める馬鹿がいる。
それも本気で言ってる(ネタとして言ってる分にはかまわんけど)

見せているものがマジックなら、魔法である。魔法にタネも仕掛けもない、あるとすれば・・・魔力か(笑)
言葉の魔力、視線の魔力、指先の動きの魔力・・・言われてみれば魔力かもしれないけど。
上記のような台詞を平気で用いる人たちのマジックショーで、
観客にタネや仕掛けの前提を与えているのは、他ならぬ演技者のほうである。

いちいち「たねもしかけもありません」なんて馬鹿な事を言わないで、
演技に没頭させる事が出来ればいいだけなのである。

結局のところ、あの台詞は、ど下手な古の演技者たちのエクスキューズであり、
それが浸透して日本人特有の手品の見方を作り上げたのかな。

こう書いてくると、肯くマジシャンや手品師も多いのかもしれないが、
じゃあ、ただ技術があることが良いかというとそうでもない。やはり、

マジックはどこまで行っても魔法なのである。

技術の塊ではない。わたしは演技を見せる時に、自分の行っている事をテクニックとは思っていない。
あくまでも魔法だと思っている。その証拠・・・でもないが、自分が行っている現象に自分で驚いたことがある。
しかし、魔法であると言い切るためには、人知を超えた努力があって始めて言い切れるのである。
わたしは、これまでにしてきた自負がある。だから、こうして言い切る。

タネややり方がばれそうになる時に、どう誤魔化すの?
と思っている観客やマジシャンがいたら、こう言いたい。

何が、バレルの?ぼくたちが見せているのはマジックだよ。
ばれるとしたら、
僕らが魔法使いであることだけさ・・・