music


基礎、応用と書いてきて、なぜここで「準備」なのかといえば、それは曲を探すという最も基本になる部分をすっとばしてここまで理論を説明してきたからだ。何故飛ばしたかといえば、別にマジックに使う曲をいちいち買わなくても、まずは自分の家にあるCDから探すのも大事だということ。
例えば、アイドルのCDだって、インストロメンタルバージョンが入っていれば、もしかしたら使えるものがあるかもしれない。まあ、稀ではあると思うのだが。ちなみに、松浦亜弥ことあやや。じゃなーや、あややこと松浦亜弥の最新シングル、「THE美学」などは使えそうな、使えなさそうな。いや、声が入っているとまったくもってわしのレンジにはコないのだが、インストロメンタルだったら良いかも。

さて、今回の準備編「どうやってCDを探すのか」というのは、私の探すパターンをご紹介する。私の場合、マジックの曲を探すというのが日常命題になっているので、かなり広範囲で探すことが可能だ。今回はレベルと難易度(ここでは時間がかかるもの、面倒なものを高い難易度としている)もふくめてご紹介しよう。レベルは1から5、難易度はAからEだ。どちらも後者が高いレベル、難易度とする。以下に挙げたものは頻度の差はあるものの、すべて私が実際に行っている方法である。

■レベル1 難易度D
□自前のCDを聞きなおす
とりあえず、自分の持っているCDを改めて聞きなおすというのは非常に重要だ。私自身も自分が持っているCDは気が向くと聞きなおしてみる。これは趣味や嗜好性の変化によって、それまでは気にならなかった曲が、意外と良い曲だったということに発見するケースがあるからだ。
難易度を高めに設定したのは、とにかく時間がかかるため。

■レベル2 難易度A
□CDショップの視聴コーナーで探す
タワーレコードやHMVなどの大手CDショップなどは視聴コーナーも充実しており、これらを活用するのは非常に楽だ。ジャンル別に視聴コーナーがわかれているので、洋楽の必要と感じるジャンルを中心に攻めると良いだろう。
私の場合は、ポップやロックなどよりも、フュージョンやワールドミュージックなど、普段はなかなか聞くことができないジャンルなどを中心に探している。それ以外は、別のシーンにおいても聞く可能性があるので、時間短縮を心がけている。

■レベル3 難易度B
□映画を見て探す
映画を良く見る人は、その趣味の中で気になる音楽などをピックアップしておくのも良い。この場合、探すのはサントラを探せばよいので、非常に簡単だ。ただしレンタルビデオなどで見ている場合は古い映画だと多少は苦労するかもしれない。
もう一つ重要なのが、映画を見ていると音楽を聞き逃すケースが非常に多い。まあ、お約束ではあるのだが。メインテーマやエンディングテーマ以外にも、意外と名曲があるのが映画の常なので、時間がある人は音楽に注意して二回目を見るなんてのもよいかもしれない。

■レベル3 難易度C
□ラジオ・有線を聞いて探す
ラジオや有線を良く聞く人などは、そこから探すのも分かりやすい。この場合、良い曲に出会う可能性は挙がるものの、その曲が何なのかを確認するのが非常に難しい。
DJの場合は曲の最初と最後に曲名を言ってくれる番組が望ましい。それ以外の場合と有線の場合、私は放送局に電話して確認している。
ちなみに、CS放送のスターデジオというラジオ番組ではテレビ画面上に常にアーティストと曲名が表示されるので、非常に便利で最近はこちらを活用している。

■レベル4 難易度D
□テレビで探す
かなり高度になってきた。テレビ番組などは音楽の効果を非常に重要視しているため、思いもよらない名曲にであう可能性がある。これは、番組のオープニング曲とかだけでなく、バラエティのコーナージングル、天気予報のBGMなど、枚挙に遑がない。これらの大半はテレビ局に電話してごり押しで聞かなければいけないため、面倒くさいのだが、本当に欲しい曲があれば、是非そうするべきである。

■レベル5 難易度A
□適当に買う
時間はかからないが、金がかかる。運と勘と経験だけの世界。あまりお勧めはしないが、当たるとうれしい。
私の場合、一度良い曲を見つけたアーティストはアルバムを追うようにしている。また、映画のサントラなどの場合は映画のストーリーにあった曲を多く収録しているケースもあるので、映画を見なくてもジャケットの雰囲気などで買っても良いだろう。事実、私の家には見たこともない映画のサントラがゴロゴロしている。

だいたい、こんな感じである。そのほかには、他のマジシャンが使用している曲を聞き出して買うなどの方法もある。また、最近はコンピュレーションアルバムが流行っているので、雰囲気やテーマにそって曲がまとめられているため、外れを少なくして適当買いすることもできるようだ。

曲を探すということは、あくまでも準備段階で、いざ使うというときに探すよりも長期にわたって蓄積したほうがよいかもしれない。えてして、こういったものはイザという時には見つからないのが世の常なのである。

前回の基礎編をふまえ、応用編では具体的なジャンルと共にそのジャンルの持つメリット、デメリットなどを語っていきたいと思う。いくつかの具体例を用いるべきなのだが、良い例、悪い例、あげるときりがない。ここでは私的好例を知人の中からのみチョイスすることにしよう。障らぬ神に祟り無しである。

■映画のサウンドトラック
映画のサントラから曲を引っ張ってくるケースは非常に多い。私がここ一年間で最も多く接しているのはディズニー系の曲だろうか。他にも多くのケースがある。
これらが用いられる最大の理由は演技にあわせやすいという印象をマジシャンが持つからだと思う。これは、映画自体がマジックと同じようになんらかのシーンや意味合いを持ち、そこにあった音楽が使われているからである。ようは、演技・映像に合うようにすでに音楽が選ばれているのだ。

ムーディなマジック(解釈は様々だが)を行う際に、「美女と野獣」の”Beauty and beast”や「アラジン」の”A whole new world”などは合いやすい。そもそもが感動的なシーンに用いられている曲だけに抑揚もあり、演技が感動的なプレゼンテーションであれば雰囲気を盛り上げる効果をもっているだろう。

しかし、映画のサントラにおいてデメリットも同じ部分に存在している。

サントラの代表曲というのは、返せばその映画の代表曲ともいえる。つまり「曲=映画」のイメージが非常に強い。これは時にデメリットとなる。演技が映画本編に負けてしまう場合だ。

最近の映画。CMで多用されている。名作でも印象が強いもの。などはこの傾向が強く、これは時にマジックに大きな弊害をもたらす。つまり観客の持つ曲に対するイメージと実際に視覚で捉えているマジックの演技との落差が悪印象を与える場合だ。

前者のメリットと、後者のデメリットはご覧いただけるように同じ理由から派生しているもので、これは拭うことができない。これの回避方法はなく、しっかりとした演技をすることと、曲の持つイメージを理解した上で使用するしかない。

映画サントラで印象に残るのは、緒川集人の「ロケッティア」や「美女と野獣」だろうか、これらは曲のイメージを効果として利用する典型的な例だ。

逆にサントラだが、映画のイメージを利用しないケースだと、秋元正が7,8年前に行っていた演技。たしかロープマジックだったと思うが、これが分かりやすい。サントラを使用しているものの、メインの曲ではなく、劇中の1シーンで使用されているものだ。映画のタイトルも曲名も忘れているので、なんの参考にもならない。

サントラを取り入れやすいもう一つの理由が、音楽の情報を映画を見ることによって仕入れられることかもしれない。CDショップにいって、一枚ずつ視聴しなくても、日々見る映画の中で気になる音楽があれば、CDを購入する。これは今後音楽を導入したい人にとっては取り組みやすいかと思う。

さて、次に行こう

■新旧含め有名な曲
有名な曲というのは取り扱いが難しい。というのはリアルタイムで有名なのか、ちょっと昔で有名なのかでスタイルが変化するからだ。

これらのメリットとデメリットも相対している。映画と同様に曲自体の印象が強い。若干違うのは映画のサントラの場合、映像という付加価値がつくが、こちらの場合は曲に対する思い入れがつく。つまり思い出という名の映像だ。

例えば、自分にとっての思い出の曲があったとする。その思い出の曲をBGMにして物凄い3流の映画があったとしたら、私はその映画を見ないかもしれない。思い出の曲を汚されている気がするからだ。もしくは映画を見ながらも、その思い出が脳内にリフレインするかもしれない。どちらにせよ映画に対する弊害が発生することは間違いない。

しかし、これは全てに発生するわけではなく、その曲の鮮度によって変化する。また、演技とのマリアージュ(組合せ)がよければ、思い出を含め、効果が倍増するケースも多い。

知人の演技からピックアップするのであれば、秋元正氏の「メモリー」を使用したマイザーズミラクルなどは典型だろう。あれはストーリーラインと曲のイメージのマリアージュが成功している例だ。いまさら他の曲で見せられても、ピンと来ないかもしれない。

さらに掘り下げる

■他のマジシャンが使っている曲
禁断の手法である。願わくば同じテリトリー内で使用することは避けるべきだ。

しかし、使いやすい曲というのは存在していて、多くのマジシャンが同じ曲を使っているケースというのは多分にある。最近で考えると、Cirque du soleilの「Eclipse」が挙げられる。ステージマジシャンがステージやイリュージョンなどで用いているケースが多い。実際に流行ったのは4,5年前と記憶しているが、述べ10人くらいのマジシャンが使用しているのを見た気がする。この狭い業界で10人も見ればだいぶ多いかと。平成の「オリーブの首飾り」として認定しても差し支えないかもしれない。

ここで重要なのはマジシャンのイメージがついてしまっている曲は避けるべきだということだろうか。ここのところではそれほど強烈に曲にイメージが張り付いているマジシャンは少ないので、問題になることはないが、どんなに良い曲でもデビットカッパ−フィールドがテレビで使用した曲を使い難いと思うのは正常な思考だと思われる。その辺さえクリアすれば、あとは本人の気持ち次第である。

■日本語の曲
これまた難しい。理由はこれまでに書いたものに多く重なってくる。

日本語の最大の問題は、歌詞から受けるイメージが大きすぎるのである。また、日本人が演技する場合だと、台詞と曲の日本語がかぶってしまい、台詞がぼやけてしまう。というリスクをしょってしまい、危険度が増す。

実はこのリスクは本来存在しないリスクでもある。なぜなら海外のマジシャン、例えば英語圏のマジシャンは自分がマジックをする際に英語の曲をかけているのだから、同じ条件下といえる。

邦画などを見ても、劇中に日本語の曲をかけることはあるが、これも重なっていない。

しかし、日本人のマジックの場合、ここを意識するがあまりに、逆に際立ってしまっているのかもしれない。つまり改善方法はあるわけだ。

とはいうものの、私自身はこれまでにそのような演技にあったことはない。日本語の曲をかけて演技するケースは数多く見ているが、どうしても曲の持っているイメージが理解しやすい分、演技とのマリアージュを意識してします。大学の発表会などでアップテンポな曲だからといって、サザンオールスターズは如何なものか、などと私の耳は考えてしまうわけである。

しかし、曲のイメージを十二分に理解した上で、演技とかみ合わせることができれば。その効果は英語の曲よりも強くなるはずである。これは今後の研究課題ともいえるだろう。

とまあ、いくつかのケースについて考えてみた。参考になる部分、俺はそうは思わないよ、という部分もあるだろうが、参考にしてもらいたい。

次回は、活用編として、曲をどうやって探していくのか、私の方法を紹介していこうと思う。

クロースアップと題したのは、わたしがクロースアップマジシャンだからだ。同じ考え方はステージにもあてはまるやもしれない。

前回の「音楽の魔性」で私が言いたいことは実は完了していたりもする。それは、

■音楽はマジックの効果を増大させるべく使うべきだ。

というものである。

今回は基礎編として、選曲の方法から考えてみたい。手っ取り早いのは私の場合だ。
我が家には洋楽、邦楽あわせて300枚程度のCDがある。このうち大半はマジックをする上での曲を探すために購入したもので、その中の大半は使われないまま、畑の肥やしになるか廃棄処分される。実際に購入した枚数は300枚では聞かないだろう。

ジャンルも海外はアーティストものから映画のサントラ、コンピュレーションアルバム、カバーアルバムなど多彩。アメリカ、イギリスに関わらずヨーロッパ音楽や東南アジア系にも手を出している。

私の場合は、選曲の基準はマジックに合うかどうかの前に、「Psyka」にあうかどうか、を重要視している。そのため、マジックが準備されていなくても選曲できるというのは大きいかもしれない。

私が曲を選ぶ時のポイントとしては
・抑揚がある
・歌詞の意味がわかるものは内容を理解しておく
・短調である(笑)
・5分前後の曲であり、途中でフェードアウトしてもおかしくない
・もしくは4分前後で最後がフェードアウトではない曲

などがある。

様々なアルバムを購入してきたが、最近多用しているのは「Cirque du soleil」のアルバムだ。ここ数年、クロースアップマジックの大会で使用している曲はすべて彼らのサントラを仕様している。

「Cirque du soleil」はカナダ・ケベック州生まれのストリートパフォーマーの集団である。日本的な見方をすればサーカスのようなものであるが、パフォーマンスグループと考えたほうがよい。40ヵ国、500名以上のアーティストによる一大グループだ。

日本では、ファシナシオン、サルティンバンコ、アレグリアなどで知られている。来年にはキダムという作品を演じる。私の指しているアルバムとは、彼らの作品のサウンドトラックのことだ。

ちなみにこのサントラは日本では発売されていない。一部レコード店で取り寄せが可能だが、てっとりばやく手に入れるには通信販売が良い。英語の通販サイトも運営されているので、興味のある方は買ってみよう。ちなみに、彼らのアルバムに関しては初期の作品はすでに絶版されていて入手できないようだ。

パフォーマンス用の音楽だけあって、パフォーマンスに向いている曲が多い。ただし、独創的な世界観を持った音楽なので、誰しもが使えるというわけではない。この辺は、自分のイメージとのすりあわせが必要になってくるだろう。私は比較的すんなり入れたのは、怪しいという点で一致していたからかもしれない。

さて

選曲だが、曲は固有の要素をいくつかもっている。それは

・歌があるか、インストロメンタルなのか
・日本語なのか、英語なのか、その他の国なのか

つまり、歌なし、歌有り(日本語)、歌有り(外国語)の3種類だ。

ここで一つ確認しておかなければならないのは、音楽はそれだけで一つの作品であるという点だ。作品には歌手、作詞者、作曲者の意図がこめられている。気持ちの込められた作品をバックに自分の作品を見せるということは、それだけで一つの戦いだということだ。

ここ数年、様々なステージマジックやクロースアップマジックを見て、常に思うことはマジシャンの演技が音楽に負けてしまっているケースが多いということだ。先般、某所で有名な日本人アーティストの曲をバックにミリオンカードを行っているマジシャンを見たが、完全に曲負けしてしまっていた。曲のイメージが強すぎて、演技のコンセプトが薄れてしまっていたのである。ぶっちゃけ、耳をふさいでマジックを見るか、目をつぶって音楽を聴いたほうが良いという状態になっていた。

曲の持つ力を感じないようにするために、日本のマジシャンが多く使用してきたのが海外の曲を使用するというものだ。これは一つの解決方法といえる。

もっと薄めるには、英語じゃない曲、もしくはインストロメンタルを選ぶということだ。これはどちらも日本人にとっては作者の意図が伝わりにくいので、マジックに対する影響が少なくなる。

しかし

もっとも優れた解決方法は、音楽に負けないしっかりとした演技を行うということだ。しっかりとしたパフォーマンスの意図と音楽が持っている雰囲気や意図がシンクロすると、これは非常に大きな効果となる。

音楽の効果により、演技の力がアップするケースが多いマジシャンとしては、私は小林恵子さんをよく挙げる。知り合いかどうかは別にして、彼女の演技は音楽に負けない力を持っている。そのため、演技の現象と音楽が勝手にシンクロして、非常に心地よい現象になることが多い。

さて、話が混ざってきた要旨を以下にまとめる。

・選曲には、マジックの為の選曲とマジシャンの為の選曲がある
・音楽は一つのエンターテイメントであるということを意識する
・音楽の持つ力を侮らない
・音楽に負けない演技をする。負けるのであれば、音楽はかけない方が望ましい

次回は、基礎編の続きとして、選曲時の注意事項を具体的にお話しよう。

今回、このエッセイを始めるにあたって、自分が残しておきたい内容のジャンルを5つくらいに絞ろうと考えた。そのときに、比較的早めに確定していたのが「音楽」というジャンルだった。

マジックと音楽は非常に密接な関係にある。実際に音楽を使うのはステージマジックだけだと考える旧態依然の捉え方はいまだにあるものの、その利用方法はクロースアップマジックまで広がってきている。

このMUSICの章では私の考えている音楽とマジックの関連性に関して取り上げていくことになるのだが、これは浅くもあり、深くもある。今回はその入り口となる。音楽の持つ魔性を取り上げておこうとおもう。これは今後の音楽の話における根本の部分である。

音楽は非常に古くからある自己表現の方法である。絵にせよ、写真にせよ、そしてマジックにせよ、それは演技者もしくは筆者、すなわち表現者の意図を含んでいる。

マジックにおける音楽は、マジックの現象を行う上で助けとなる効果音として捉えるケースが多い。少し前の大学サークルの発表会などを見ると、そのステージでかかっている曲はマジックのイメージよりも、むしろ演技者が好きな曲、乗りやすい曲などが多かっただろう。

しかし、音楽は一つの作品であるという点を忘れてはいけない。その曲には、その曲を作った人の意図が存在しているのである。

マジックを行う際の音楽は、実は諸刃の剣であり、場合によっては自分のマジックに含んだ意図や表現を打ち消してしまうケースを持っている。俗に言う「曲に負ける」というものだ。これはこれまでに見てきた多くのマジックにおいて目の当たりにしてきた。

一方で、マジシャンの意図にジャストフィットした音楽の場合、その効果は尋常ならざるものがある。

私たちは自分のマジックで音楽を流す際に、その音楽の持つ力をあなどってはいけないのである。それを見落とすと、自分のマジックを落としてしまう事にもなるし、どんなに良い現象だったとしても、観客に伝わる力が半減する可能性もあるのだ。

音楽の魔性をいかに使いこなすか。これはこの章における大きなテーマである。今後もこの中で様々な視点から取り上げていきたい。