11月 2002


反響はあまりなくても、掲示板にお一人とメールで数通いただければ、それはもう十分な反響と私の中で認識してしまえば、こっちのものである。

中でも質問をいただいたのは、掲示板#82の匿名希望さんだった。これは商品そのものの話になるので、趣旨とは離れているのだが、せっかくの機会なのでここでお話していきたいと思う。

掲示板に寄せていただいたコメントを併記しつつ、お答えしていこう。なお、以下の答えは私の独断と偏見による判断が含まれている。販売側や利用者にはもしかすると違う意見もあるかもしれないので、その場合は掲示板にお書きいただければ、と思う。

■それぞれの長所と短所を併記していただけると、これから買う人には助かるのでは?

なるほど、これはまったくもってごもっともである。意外と知らなかったのだが、マジックカードPROを否定する人たちの一部は商品を見たことも買ったこともないらしい。これは匿名希望さんではなく、他の方から寄せられたメールで知ったことである。マジックカードPROはこちらのお店で購入できるらしいので、1200円ではあるが、1個くらい買ってから判断するのも良いだろう。

では、私なりのカードそれぞれに対する長所と短所を述べていこう。

まず、バイシクル。

バイシクルの長所は、マジック用のカードとしてディファクトスタンダードにもなっているため、これに付随したアイテムがたくさんある事だ。ギミックを利用するマジシャンにとって非常に重要な要素とも言える。また、最終加工により、カードの滑りが非常に良い。ファンやスプレッドなどがしやすい為、これらの「見栄え」のする動きはバイシクルは優れていると言えるだろう。比較的どこでも購入できるというのも長所といえる。
一方で短所の最右翼は、品質の不安定さが挙げられる。ここ数年特にひどいのだが、エッジのカッティングが粗雑だったり、色、特に青に関しては製作している工場によって色が違う。ギミックカードを乗せたら、レギュラーデックと色が違って使い物にならない、なんていうケースはマジシャンなら一度くらい経験したことがあるのではなかろうか。他には同じく印刷だが、印刷ズレが激しいという事もある。昔購入したもので、片方のインデックスが半分切れてしまっているものもあり、キレた事もあるくらいだ。また、紙のそり方も強い。新品は必ずカードが横方向に山なりになっている。これはデックの中で1枚だけ表にして隠して置きたい時に、とんでもなく目立ってしまう時もあり、反りを直す手間を必要とするのはいただけない。

次にBeeだ

Beeの長所は、バイシクルと同じく最終加工により、カードの滑りが非常に良い。また、素材の違いかと思うが反りも比較的少なく、手に馴染むスピードが速いのも特徴だ。カードの曲げに強い、過剰な滑りがないなどギャンブリングカードとして必要な要素を多くもっている。セカンドディールなどギャンブルテクニックがバイシクルよりも僅かにやりやすいのはこの辺の要素が大きいと思われる。
短所は、エッジがないという事だろうか。白いエッジが無いので、デックの中でカードを1枚表にすると、明らかに色が違う。多少でもずれると即分かってしまうくらい繊細なものである。ギミックカードなどはほぼ無いと思われ、これはギャンブリングカードとして当然の要素がマジックでは短所となりえるという事であろうか。

最後にマジックカードPRO

マジックカードPROの長所と短所は表裏一体で、ニスの混合比の違いにより上記の2つより滑らない。その代わり、反りも少ない。スプレッドなどに関しては、バイシクルで慣れているとしづらいという感覚を持つと思われるが、これは慣れの問題だろう。カード表面のエンボス加工がないのも特徴で、これによりカードの接着面は向上している。いくつかの技術はこの効果によりやり易さが格段にあがるが、その反面、いくつかの技術ではこれに慣れるのに時間がかかるだろう。具体的な技術名に関しては割愛させていただく。
私的な事でいうと、品質の安定性、反りの少なさなどから、演技で多く用いる「エスティメーション」という技術を行うにあたっては、3つの中でこれがベストである。
短所は値段とギミックカードの問題だろうか。値段に関しては仕方が無いと思う。しかしカード自体の寿命は不思議とバイシクルより私は長くなるので、結果としては同コストかもしれない。ギミックカードに関しても、レギュラーデックの販売元がギミックに関しても展開している事もあるし、これが他のマジックショップでも手がけてもらう事ができる世の中になればあっという間に改善されるだろう。

カードにはそれぞれ長所短所があり、完璧なカードは存在していないし、おそらく今後も存在しないだろう。これはマジックのためのカードが必要とする要素が色々なところで相反してしまうからだ。特にカードの滑りと反りは比例するため、少なくとも私は何がでてきても満足しない気がしている。

■Jokerがマンガのキャラクターになっている時点で大人の私には購買意欲が湧きません。これはpsykaさんの演技では困らないのでしょうか?

なるほど、それも大事な要素である。私の場合はまったく問題がない。なぜかというと、私の基本的な演技はジョーカーをまったく使わないので、デックにジョーカーが入っていないからだ。もし絵札がキャラクターカードだったら、きっと私も買わないだろう。これはキャラクターモノとしての商業価値を踏まえているため、良し悪しという判断は難しいのだが、ブースターパックなどで地味なジョーカーを出してくれたらうれしいという気持ちも少しある。まあ、どちらにせよ使わないのだが。

ちなみに、私はバイシクルのジョーカーもあまり好きではない。個人的な好みでいえば、タリホーのジョーカー(調教師)がお気に入りだ。

■ブースターパックとかいうものは自腹で購入されていますか(購入後のトレード含む)?あの購入形態も購買意欲に結びつかないのですが、どう思われます?

ブースターパックに関しては意見が分かれるところだろう。マジックアイテムとしてはそろえづらいものの、トレーディングカードとしてコレクター意欲をくすぐるという意味ではビジネス的にありだと思う。私自身はブースターパックを購入しているが、演技で使用するものは2種類しかなく、これを必要枚数揃えた時点で購入しなくなった。

特殊なカードは別にして、ダブルバックやブランクバック、ブランクフェイスなどバイシクルでも展開しているオーソドックスなものに関しては、それ単品で販売してもらえると有り難いと思う。もしかしたらしているかもしれない。詳しくは知らないが。

マジックカードPROに関しては、発展途上であるという事と、開発にマジシャンが加わっていることから、商業的な見地だけでなく、マジックのアイテムとして購入しやすい方法がどんどん取り入れられていく環境ではないかと思う。その点ではバイシクルよりも優位があり、今後に期待できるのではなかろうか。

私自身はマジックカードPRO信者ではない。使いやすい方を使用するし、ダメなら買わないだけである。マジックカードPROでジャンボカードが出れば、ショーでバイシクルを使わなくなるかもしれないし、逆にバイシクルに安定性が完全に戻ったらマジックカードPROを使わなくなるかもしれない。ようは使いたいカードを使うだけだ。

お返事のお返しにはなっているだろうか。この話に関しては引き続きご意見、ご感想を求めていきたいと思う。あまり大きい話ではないのだが、私にとっては興味深い話である。

今回は、少々くだらないお話にお付き合い願いたい。

マジシャンであるために、トランプというのは切っても切れない関係である。無論、トランプを使わないマジシャンもいるだろう。ステージマジシャンであればあまり関係がないかもしれない、が、一度もカードマジックをしたことが無い人というのはそんなにいないはずだ。

なので、トランプはマジシャンにとって切っても切れない関係とする。

ステージマジックにおいて、ミリオンカードなどで使用するカードは色々ある。私はニールセンカードを使用しているが、そうではない方もいるだろう。こっちはあまり語れる知識がないのでパス。

今回はクロースアップマジックにおけるカードの話である。

クロースアップマジックで使用するカードの定番といえば、”U.S.Playing Card Company”の「バイシクル」シリーズである。現在、日本で最も販売されているのは、ライダーバックシリーズである。赤と青の2種類がある。皆さんもご承知だろう。

ここ最近の話だが、TI東京さんがマジックマスターカードというものを発売している。聞けばマジックキャッスルのメンバーが、紙質、デザインなど細部にまでこだわって作った、マジックキャッスル公認のクロースアップマジック用のカードです。との事。
(2007/2/14追記)すでに販売終了している。

まあ、マジックキャッスルが公認しようが、どこが協力しているのか、など世間のしがらみは向こうの方に置いておいたとして、マジシャンはどのカードを使うべきだろうか。

非常に悲しい事だが、マジックカードPROを使用していると、白い目で見るマジシャンがいる。おそらく畑違いの団体だからなのか、非常に村八分的な扱いをされた事がある。逆もまたあり、マジックカードPROを主に使用する団体でバイシクルを使っていると、「今日はネタでもやるんですか?」と言われたり。

私からすれば自分が使いやすい方を使って何が悪いとフォントを大にして言いたくなるような事なのだが。

バイシクルもマジックカードPROも、これに加えてBeeなど、私はそれぞれに長所短所があると思っている。バイシクルに関しては、最近は品質の低下が激しすぎる。一時期の安定した品質は一体何処にいってしまったのか、嘆かわしいものである。
マジックカードPROは最終的な加工がバイシクルとはまったく異なるため、バイシクルの質感を好む人から見ればダメカードの烙印を押されるだろうが、意外と長所も多い。短所は、おそらくバイシクルの長所部分になるのだろう。品質の安定度は抜群である。
Beeはカード自体が特殊だ。エッジレスはマジック自体に問題を起こす可能性を持っているが、一方で短時間で手になじむという点では他の追随を許さない。さすがギャンブリングカードである。

私は、現在はマジックカードPROを比較的利用している。しかしバイシクルやBeeを使わない訳ではない。時には、こちらを利用する場合もある。

私は、プライベートパーティなどに呼ばれた場合に見せるルーティンでギャンブルをモチーフにしたショーを組む事がある。この場合、私はBeeを全ルーティンで使用し、その雰囲気を作り出している。Beeに何故エッジがないか、などの話をプレゼンテーションに組み込むなど、良い効果を生むケースが多いからだ。

また、サロン以上の大きなステージでデックを使う場合はバイシクルを使うケースが多い。これはジャンボカードを使用するルーティンを含んだ場合に、一つのショーのなかで何種類ものデザインのカードを使用することを避けたいという配慮のためである。マジックカードPROには現時点ではジャンボカードが存在しない。

今まで、カードといえばバイシクルだっただけに、カードマジックPROの出現というのはマジック界においては一つの実験だと思われる。私は、自分が使いやすいカードを選ぶべきと思うのだが、皆さんはどうお考えだろうか。

前回に引き続き、

・この技術は出来ます
・この技術は見せられます
・この技術は教えられます

である。

先般、BBSでLILIPUT氏から頂いたご意見で、別の方は
・見た事がある
・知っている
・覚えている
・出来る
・見せる事が出来る
・魅せる事が出来る

という分け方をしているというお話を頂戴した。

まったくもってごもっともで、これは私の書いた「出来ます」「見せられます」に文章で書いた「知っている技術」を加え、さらに細分化した考え方である。今回の目標は自分の技術を見直し、その状況を理解して欲しいということがコンセプトであり、その分類方法は細かいものが良いかもしれない。
私は、「出来ます」「見せられます」と二つに分けているが、かなり「出来ます」の範囲が広く、実際にはレベル分けでいているのだろう。「見せられます」というのは物凄い基準値が高い。もしかするとマジックできないかもしれない位だ。

さて、ここに私が何故「教えられる」技術を加えたかというと、これはプロマジシャンを含めた姿勢に対する意見というか提案が含まれている。

前章でも触れたように、私にとっての教えられる技術とは、その技術がどういう意図を持ち、何が重要なのかを自分の中で認識し、頭の中で体系立てが済んでいるものである。人が同じ技術を行っているときに、何が間違っていて、何が良くないのか、そしてどうすれば直るのかを伝えることができるものである。

私がこの「教えられる」技術を「見せられる」技術の延長線上に持ってきているのは、プロマジシャンの端くれとして、啓蒙活動に対する個人の姿勢を物語っている。

私は、自分の活動の一つとして、若手やこれからマジックを始める人達に対して教える事を、活動の柱としている。具体的にレクチャーを開いたりしているわけではないが、集まりや会ったマジシャンに聞かれれば、小さな事ではあるが、マジック界全体の底上げ、文化振興のためにも、より多くのマジシャンに技術の深さを知ってもらい、なるべく正しい(もしくは上手い)見せ方を習得して欲しいと考えている。

無論それは、PSYKAのやり方であって、そのマジシャンに師がいるのであれば、参考意見程度にとどめるようにしている。私は技術は伝承性の高いものと思っており、同じ技術でもA氏とB氏では、同じ人から習ったものでも、異なる技術体系に変化すると考えているからだ。

なので、A氏に師事しているマジシャンから技術に関して質問を受けた場合、全てを直してしまうということは、A氏の技術に対する考え方を否定する事になりかねないために、非常に慎重になる。

無論、このA氏がまったくもって間違っている(上手くない)見せ方を教えている場合は、我慢できず修正してしまう場合もあるが。

プロマジシャンとして活動するうえで、それに憧れるマジシャンに多く出会うはずだ。この「教えられる」というのは、そもそも教えるかどうかというプロとしての姿勢にも関わるのだが、教える以上は、技術は「見せられる」ものではなく、「教えられる」ものでなければならない、と考えている。

無論、全ての上手いマジシャンが教えられる訳ではないし、見せられる先に教えられるがあるわけでもないだろう。演技者としてはイマイチでも、育てた弟子が演技者として成功するケースは数多く存在する。しかし、彼らはすべて見せられる技術を通過していることを忘れてはならない。知識だけで語っているのではなく、そこには必ず経験が存在しているはずである。その点を踏まえ、私は「見せられる」技術の先に「教えられる」技術を置いた。これは「教えられる」技術が最高到達点という意味ではないことをご理解いただきたい。

人に教えるというのは、大きな責任を背負うという事を知ってもらいたい。その人のマジシャンとしての技術体系に影響を与えるのである。中途半端な知識と経験で教える事が、時にはそのマジシャンのマジック人生を大きく遠回りさせる可能性を秘めているのだ。アマチュアマジシャンでもプロマジシャンでも、その責任感を感じないままに、自分の技術を教えている姿を時折見かける。こういった技術がある、という伝播はいいにせよ、直したり、改善したりするという教授は大きな責任感を持って望んでほしいのである。

動作の意味等を理解するのと実際にその事をこなせると言うのは次元が違う。しかし、ここを明確にしないまま、教えているマジシャン、特にプロマジシャンはそこを改めて見直して欲しいのである。

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